2-5.封じ込め性能に影響を与える要素

ヒュームフード自体が適切な封じ込め性能を発揮できる能力を有していても、接続されている設備や周囲の環境が不適切な状態であれば、その性能を発揮できないことになります。 排気ダクト、排気ファンの能力、排気風量の適切な調整、適切な電気制御など、関連する設備が適切に稼動して始めて機能することになるからです。
例えば、排気ファンの能力が適切であっても、排気ダクトの一部に穴が開いていれば、ヒュームフードの排気風量は維持できなくなります。実験室の設備工事が終了した段階において、関連する設備全体が適切に施工され、的確に機能しているかどうかを確認することはとても重要な行為です。また、この確認は稼動後にも定期的に行なわれる必要があります。

ヒュームフードの封じ込め性能に影響を与える要素としては、大きく以下の5項目があります。

  • 1)適切な制御風速(排気風量)の維持
  •  排気ダクトと排気ファンが適切に設備されて、 設置されたヒュームフードに必要な排気風量が設定・維持されないと、制御風速が維持できなくなり、封じ込め性能が低下します。 排気風量は高すぎても悪影響を及ぼします。
  • 2)設置場所における干渉風の影響
  •  作業開口部に干渉する気流は封じ込め性能の 低下を招きます。空調機の吹き出し気流や吸引気流、扉や窓の開閉により発生する気流、周囲の器械等から発生する気流などです。
  • 3)前を横切る人の影響
  •  作業開口部の直前を人が横切る際に、内部の ガス等を誘引する現象が起きます。 また、実験者に接触すると事故に発展する可能性もあ ります。
  • 4)作業者の動作による影響
  •  作業者の動作は乱流の発生要素の一つです。 適切な作業慣習の実行が必要です。
  • 5)器材の配置と実験操作
  •  内部に大型の機材を置いたり、大きな熱源を 使用する場合には、適切な設置方法や運用方法が必要です。 (4)(5)については「3.運用と使用方法」を参照)


実際の設置現場において、ヒュームフードの封じ込め性能を簡易的に確認する方法として、以下の2つをお勧めします。

  • ①風速測定
  • 運用上の最大の作業開口において制御風速の測定を行い、適切な風速が維持できているかどうか、場所による違いがあるかどうかなどを確認することができます。(図2-5a.参照)
  • ②スモークによる可視化 煙を利用して作業開口面の内部および外部の気流の状態を確認して、気流がきれいに流入して逆流などを起こしていないか、また、気流を大きく乱している要素はないかなどを確認することができます。市販の発煙管やミスト発生装置などが利用できますが、市販の線香を利用しても良いでしょう。(図2-5b.参照)


上記の確認でヒュームフードの流入気流に影響を与える要素、例えば空調機の吹出し気流が直接作業開口部に当たっているなどの状況が判明した場合は、吹出し口の向きを変えたり拡散板を付けるなどの対応を取るべきです。


図2-5a.風速測定

  • 御風速の測定は前面開口平面で行います。(例:写真左) 測定には通常、熱線式風速計(例:写真右)が使用されます。風速計の正しい使い方を理解しておくことも大切な要素です。


図2-5b.スモークによる可視化

  • スモークテストでは前面サッシを使用開口高さ(実際に使用する最大の開度)にして、開口部の周囲および中央付近の外側にスモークを発生させて内部にスムーズにスモークが吸引されて逆流が生じていないことを確認します。