2-2.制御風速と作業開口高さ

制御風速とは、ヒュームフードの作業開口部に流入する空気の速度のことで、通常は m/s 単位で表示されます。 流入風速、面風速、排気風速などとも呼ばれています。 通常は使用時に前面サッシを開ける際の最大の高さ(作業開口高さ)を決め、その開口面積に対する制御風速を定めて、その制御風速が確保できる様に排気風量を設定します。

制御風速の設定値は、対象となる規則やヒュームフードの機種によって異なりますが、制御風速を常に維持しておくことは、作業中の安全性を確保する上でとても重要な要素です。 一般的には制御風速が低下すると内部のガス等を封じ込める能力が低下して、外部に流出する可能性が高くなります。 従って、制御風速を一定以上に維持する=排気風量を確実に維持することが重要となります。

一般的なヒュームフードは垂直可動式の前面サッシを有しています。前面サッシの開度は作業中に任意の高さに移動することができるため、作業開口(開放されている面)の高さは随時変化することになります。そこで、通常は制御風速を定めて排気風量を決定する際には、運用上最大の開口高さ(物理上開けることができる上限の高さ)をあらかじめ決めておきます。この最大の高さを作業開口高さと呼んでいます。

前面サッシを開けることができる高さは、メーカーや機種によって異なります。 標準的なヒュームフードの場合は、おおむね600mm前後です。 作業開口高さにヒュームフードの有効作業幅を乗じた面積が作業上開放される最大の開口面積ということになり、通常はm2単位で表示されます。(図2-2a.参照)


図2-2a 作業開口

高すぎる作業開口高さは作業開口面積を大きくし、その結果排気風量が増加することになります。このため、一定の高さ以上は前面サッシが開かなくなる様に制限をかける場合があります。使用時の最大開口高さに一定の制限をかけて排気風量の設定値を下げてしまおうという考え方です。 また、サッシが複数ある場合や、両面にある場合などには、運用上常にどれか1枚のサッシのみを開放できる様にして排気風量を決める場合が多くあります。

作業開口高さを制限する方法は幾つかあります。最も一般的なのは、開口制限ストッパを設ける方法です。(図2-2b.参照) 開口制限ストッパには鍵がかかる機能を持った物もあります。準備作業などで前面サッシを開けたい場合には、鍵を解除して開放できる様になっています。この他に、単純に開口制限高さを示す表示シールを貼るなどの方法もありますが、所轄の労働基準監督署によって、認められる対応が異なるケースがありますので、あらかじめ確認しておいた方が良いでしょう。


図2-2b 開口制限ストッパの例