実験室と法律

点検を義務とする法律や規則を学びましょう

研究室で有機溶剤を使用していますか?その有機溶剤は、「正しく」管理されていますか?有機溶剤を使用した研究を行う設備は「正しく」点検されていますか?あなたの健康は守られていますか?

研究室で病原体の取扱はありますか?病原体を取り扱う安全キャビネットは、あなたが病原体に暴露しないように「正しく」点検されていますか?あなたの健康は守られていますか?

そもそも「点検」とは何でしょうか?             
点検とは、不良箇所・誤作動などの有無を調査・診断することを言います。施設や一部機器の定期的な点検は、自動車の車検と同様に、実験者の安全を確保するために、法律で義務付けられており、法令上では「定期自主検査」として表現されています。

「定期自主検査」を義務とする法律の代表格が労働安全衛生法(略:安衛法)です。

安衛法とは、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境形成の促進を目的とする法律です。安全衛生の管理体制、労働者を危険や健康障害から守り健康を保持増進するための措置(安全衛生教育等)、機械や危険物・有害物に関する規制などについて定め、職場の安全衛生に関する網羅的な法規制を行っています。

大学やその他の研究・教育機関にも安衛法が適用され、労働者の環境・安全衛生管理の責任を負います。学生は労働者ではありませんが、労働者の安全と健康を守るための安衛法、研究に従事する全ての人にとって無関係ではありません。

この項目では、ヒュームフードおよびスクラバーだけではなく関連するその他研究機器について、安衛法をはじめとする関係法令および規則を確認していきます。

このページのポイント
 

  • 定期自主検査の義務(労働安全衛生法 第四十五条)
  • 罰金(労働安全衛生法 第百二十条)
  • それぞれの機器に対応する法令・規則の有無

 
3つのポイントについて、説明していきます。


1 定期自主検査の義務(労働安全衛生法 第四十五条)
厚生労働省が定めた機械は、下記のとおり、定期的に自主検査を行い、結果を記録しておかなければいけません。
 

(定期自主検査)
第四十五条 事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない。

2 事業者は、前項の機械等で政令で定めるものについて同項の規定による自主検査のうち厚生労働省令で定める自主検査(以下「特定自主検査」という。)を行うときは、その使用する労働者で厚生労働省令で定める資格を有するもの又は第五十四条の三第一項に規定する登録を受け、他人の求めに応じて当該機械等について特定自主検査を行う者(以下「検査業者」という。)に実施させなければならない。
3 (省略)
4 (省略)

 
上記にある「政令」とは「労働安全衛生法施行令(略:安衛令)」のことで、安衛令第十五条に、安衛法第45条で定める機械の一覧が掲載されており、局所排気装置や排ガス装置、遠心機類が含まれています。

2 罰金(労働安全衛生法 第百二十条)
定期自主検査を実施しない場合、どのような罰則があるのでしょうか。
安衛法には次の通りの記載があります。
 

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 (省略)第四十五条第一項若しくは第二項(省略)の規定に違反した者
 

もちろん、定期自主検査が行われずに設備や装置が故障、事故が起こった場合は、加えて他の法律や罰則も適用されます。

3.それぞれの機器に対応する法令・規則の有無

各機器に対応する法令・規則の有無の一覧は下記の通りとなります(20181月現在)。機器名をクリックして各詳細ページをご確認ください。

対象機器 法令・規則の有無
ヒュームフード 年1回の自主検査
スクラバー 年1回の自主検査
バイオハザード対策用キャビネット 年1回以上の定期点検
オートクレープ 年1回以上の自主検査
遠心機・遠心濃縮機 年1回以上の自主検査
高圧ガスおよびガス検知器 年1回以上の自主検査
酸素等ガス濃度計 定期点検をメーカーが推奨