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Q1.この実験室の環境は、安全上どんな問題があると思いますか?


【回答例】
1.試薬びんや実験中のビーカーのそばに、お茶やポットがありますね。実験中の薬品がこれらに飛散したのを知らずに飲んでしまうと、薬品が口の中に入ることになり、危険です。
実験する場所と飲食する場所は必ず別の場所にし、飲食物を実験室に持ち込まないようにしましょう。
実験用にポットのお湯を使うのだ、という場合は、「実験用」「飲用不可」などと大きく表示をした専用のものを使うことにし、これを誤って飲まないようにしましょう。
また、冷蔵庫も薬品用と飲食物用は完全に分けてください。


2.試薬びんがいくつも実験台の上に置かれたままになっていますね。このような状態だと、あわてて別の試薬を使って思わぬ反応を起こしてしまうことがあるかもしれませんし、試薬びんが転倒して割れ、臭気がただようこともあるかもしれません。使い終わった試薬はこまめに試薬庫に片付けましょう。
また、使用中の試薬でも、転倒して床に落ちて割れることがないように、実験台の奥の方に置く、ホルダーやトレーにのせておく、などの工夫をするとよいでしょう。


3.いくつか反応液がオープンになっていますね。揮発性の高い物質や人体に影響のある物質を扱っていませんか?験を行う前には、扱う物質の性質をよく確かめ、必要に応じて局所排気が設けられたところで実験を行ってください。物質の性質を知るには、MSDSなどを参照するとよいです。危険性をレーダーチャートに表した化学物質情報データベースVICRiは、一目で情報を得られるので便利です。
ViCRi(pdfファイル)はこちら


4.白衣を着、保護眼鏡をかけているのは良いですね。保護手袋はどうでしょうか?これも扱う物質の性質により適切なものを使用してください。材質によって薬品に溶解したり、浸透してしまうものがあります。カタログに一覧が載っている場合がありますので、参考にするとよいです。なお、保護手袋着用により、かえって操作性が悪くなってしまう場合もありますので、その際は着用の是非も含めて慎重に検討してください。他にも、保護具には、面体、ヘルメット、防毒マスク、防塵マスク、安全靴などがあります。保護具はあなたの身を守るものです。慣れないと違和感があり作業がしづらいという印象を持つかもしれませんが、ちゃんと意味があるのです。けがをして研究がストップしてしまったら、元も子もありませんね。


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Q2.この研究室は、日ごろどのようなことをすべきだったと思いますか?


学生「先生、試薬庫にあるはずのシアン化ナトリウムがありません。
   先輩たちに聞きましたが、
   いつ誰が持っていったのかわかりません。」
先生「・・・・・・・」


【回答例】

1.これは大変です。ご存知の通り、シアン化ナトリウムは大変毒性の高い物質であり、毒物及び劇物取締法で毒物に指定されています。そんな物質が勝手に持ち出されるような管理は明らかに不適切です。
 厚生労働省の通知(薬食発第1017003号)にある通り、大学や研究機関での毒物及び劇物の保管管理としては、「毒物又は劇物を貯蔵し、又は陳列する場所は、その他の物を貯蔵し、又は陳列する場所と明確に区別された毒物劇物専用のものとし、鍵をかける設備等のある堅固な施設とするとともに、敷地境界線から十分離すか又は一般の人が容易に近づけない措置を講じていること。」「毒物又は劇物を貯蔵し、陳列する場所に、「医薬用外」の文字及び毒物については「毒物」、劇物については「劇物」の文字を表示すること。」「貯蔵、陳列されている毒物劇物の在庫量の定期点検及び毒物劇物の種類等に応じて使用量の把握を行うこと。」が求められます。これらは、毒物及び劇物取締法毒物及び劇物取締法施行規則に明記されています。
 日ごろから、毒物劇物専用の試薬庫に鍵をかけて保管し、その鍵は先生など特別の人が管理する、都度、誰が・いつ・どれだけ使用したかをノート等に記録として残すようにしましょう。
 とはいっても、先生が留守の時に実験できないと困るのでみんな鍵の場所を知っている、ついうっかりノートに記載するのを忘れた、という事態が発生することは容易に想像できます。
 そこで、Suica、学生証などのフェリカカードを利用して扉の解錠を行う試薬庫をお勧めします。通常はロックされていて、カードをかざすと解錠し、同時に誰がいつ試薬庫を開けたかが記録されるというものです。試薬の種類と使用量までは管理されませんが、「誰が・いつ」とわかれば、通常実験者は実験の記録をとりますから、把握することができます。
フェリカカード式試薬庫(pdfファイル)はこちらLinkIcon


2.もし本当に、研究室の先輩たちの誰も持っていっていないとすると、盗難の可能性があります。学内の安全管理担当部署に連絡の上、警察に届け出ましょう。


REHSE会員の方には、関連する出張セミナーとして下記の講座があります。
・化学物質管理
・実験廃棄物の取扱
・労働安全衛生法


また、REHSE編集の講談社「✚研究室に所属したらすぐ読む✚安全化学実験ガイド」にも解説されています。
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その他、関連する法令、厚生労働省医薬食品局のリンク先は以下です。
・http://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/doku/dokuindex.html
・http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/20/10/08102110/001/001.htm

・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO303.html

・http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26F03601000004.html