資料2-3b. 実験中の必要最低風量


ヒュームフードに必要な最低排気風量については、国内には明確な基準はありませんが、海外の規格/基準には幾つか参考にできるものがあります。
ここで言っている最低排気風量とは、ヒュームフード内部で実験作業が行われている状況下において、どの程度の排気風量を確保しておくべきかであり、非実験中の換気量という意味ではありません。
ヒュームフードの機能として「有害ガスを希釈する」という面もあり、最低限の排気風量を確保しておくことは重要な要素です。 最近では、省エネルギー目的で極端に排気風量を下げる事もありますが、どこまで下げてよいかは、実験内容や使用する薬品の危険度に応じて事前に適切な検討が行われるべきです。
特にガスバーナーやホットプレートなどの熱源を複数ヒュームフード内に設置して過熱分解や乾燥を行う作業においては、大量に発生した熱を排出するために大きな排気風量を取る必要があります。排気風量が少ないと、熱によって発生する上昇気流によって、ヒュームフードの上部から室内にガスが漏洩してしまう危険性があるからです。
ヒュームフードの最低排気風量を検討する要素としては、以下があるということになります。
1.ヒュームフード内部の換気回数
2.内部で使用する薬品の濃度と必要希釈風量
3.内部で使用する熱源による温度上昇と熱量排気

【参考】NFPA(米国防火協会)の規格
NFPA 45”Standard on Fire Protection for Laboratories Using Chemicals-2000”(化学薬品を使用する実験室の防火規格2000年版)には、以下の内容が記載されています。
A.6.4.6 ・・・フードの排気風量は、サッシを全閉させた時に、内部の作業表面に対して 25ft3/min/ft2 以下に下げてはならない。

25ft3/min/ft2 をSI単位に換算すると、7.6m3/min/m2 になります。つまり、内部作業面積 1 m2 あたり、1分間に7.6m3/min は排気しておきなさいということになります。

ここで、標準的なヒュームフードの幅1800mmのタイプに置換えて考えてみましょう。標準的なヒュームフードの作業面の面積は1.7m×0.6m≒1 m2 であり、内部の容積は大体1.2m3程あります。 NFPA 45規格の条件を当てはめると、幅1800 1(m2 )× 7.6(m3/min/m2 )=7.6 (m3/min)=456 (m3/h)ということになります。

内部の換気回数は、456 (m3/h)/1.2(m3 )=380(回/h)
となります。言い換えれば、使用中は最低でもこれくらいの換気回数が必要ということになるわけです。

【参考】ANSI/AIHA(米国規格協会/米国産業衛生協会)の規格
ANSI/AIHA Z.9.5-2003”Laboratory Ventilation”(実験室換気)には、以下の内容が記載されています。
3.2.1. ・・・定風量システムでは、フード幅を基準とすると50cfm/ft (4.645m3/min/m)またはフードの作業面積を基準とする場合は25ft3/min/ft2 (7.6m3/min/m2)の最低排気風量が確保されるように設計されなければならない。
すなわち、NFPA 45規格とほぼ同様の記載がされていることになります。